僕とハッカーは、引き続きバンコクにて絶賛沈没中であった。
ハッカーの興味の矛先はというと、
ハッカー「電気街があるらしい。行くしかないでしょ、ウワッハッハッハ!!」
やっぱり電気街だった。
さすがハッカー、ぬかりはないようだ。
タイの電気街、パンティップ・プラザなどに一緒について回ったりした。
ここがなかなか日本には無い雰囲気で、結構面白かった。
まともなものももちろんあるが、『キワモノ』もたくさんあるのだ。
店員1「お兄さん!エロDVD!!エロDVD!!」
店員2「社長!Windowsあるよ!安いよ、Windows!」
もうね、無法地帯なわけですよ。そんなWindowsは売っちゃいけないんですよ。
そのほか、バンコクは巨大なショッピングモールなんかがたくさんあり、
急激に発展してるんだなー、という脈動をひしひしと感じることができた。
サイアム地区のMBKというショッピングモールが代表的だろうか。
僕とハッカーは、板についてきた値切り交渉をしつつ、お土産を買ったりした。
※それでも絶対日本人プライスで買わされてたんでしょうね。(笑)
「油断」という名の最大の敵
こうして、英語もロクにできなくても、ダラダラと楽しく、『自由自在』にバンコクを満喫していた。
しかし、この『自由自在』という感覚こそが、最大の敵、『油断』を生むんですよ…。
自分はここでいろいろできる、なんとかなっちゃう、怖いものは無い。
そんな感覚が、まさかあんな展開を呼んでしまうなんて…。
ひとりバンコク巡り
バンコク沈没も折り返しを過ぎた頃、ふと思った。
一人でホテルの近場の露店メシに挑戦したりはちょいちょいやっていたものの、
遠出するときは、ハッカーと大体いつも行動しているなーと。
ここで、もっと自分の可能性を広げたい、もっと殻を破りたい、なんて変な感覚が襲った。
そんなある日、ハッカーは前回登場した小木と観光に行ってくる、というのだ。
僕「よし、ひとりで遠出してみっか」
急きょ、ワクワクなひとり観光が始まったのだ。
なんやかんや、電気街とかコアなところは巡ったものの、ベタベタな観光地にはあんまり行ってなかったなぁ〜と思い、
トゥクトゥクを侍らせ、ホテル→カオサン通り→王宮と廻り、堪能した。
帰り際、事件は起こる…
王宮を出たときには、日も傾きだしていた。
いろいろ巡って足も棒と化していた。タクシーで帰ろう。
『確か、メータータクシーが安全らしいな』と思い出し、それらしいタクシーに乗り込んだ。
すると、運ちゃんが流暢な英語で話かけてきた。
運ちゃん「(英語)今日限りの全身のアイテムが揃うマーケットに行かないか?」
僕は、やってしまった。
そうそうそう!こういう行き当たりバッタリの展開を待っていたのさ!!と愚かにも心を踊らせて…。
僕「OK! Let's go!!」
謎の寺院に立ち寄らされた後、着いた目的地は…
ボロい雑居ビルの1F。『GOLDEN SUITS』と看板のあるテナント。
どこがマーケットだよ! ヤバイ、怪しいアロマしか漂ってない…。
僕は、謎のスーツの仕立て屋に無理やり入らされた。
店内にタンクトップを着たガチムチマッチョのタイ人が待ち構えていた。
狭い応接室へと通され、ガチムチマッチョと1:1で向かい合って座らされた。
ガチムチ「(英語)さぁ、好きなスーツを選んでくれ!」
やっちまった!!!
完全に油断していた罰が下った瞬間だった。
日本のカシミヤは高いよね、でもタイならたった3万で買えるんだよ、と
淡々と買うよう促してくる。…絶対に本物のカシミヤのはずが無いんだけど。
ガチムチは怖いけど、きっと素直に買えば、すぐに開放してくれるだろう。
でも、僕にもプライドがあった。
普通の日本人ならガチムチにビビってホイホイ買ってしまったりするのだろうが、
そんなパチもんを引っさげて帰国して、笑いものになりたくない…。
僕は、殺される覚悟でガチムチからの「買えよ!F○ck!!!」的な脅しに1時間耐え続けた。
マジで怖いからね!!漏らしかねない。
そして、転機が訪れた。
ガチムチ「(英語)わかった。じゃあ、このシルクのネクタイを付けてやる。なら買うだろ、愚か者!」
ここだ、ここしかないと思った。
僕「(英語)そのネクタイしか買えません!!」
すると、「もうそれでいいよ」的な呆れ返った感じで、ネクタイだけ買って開放してくれた。
助かった!!生きてる…生きてるぞ僕は!!
ネクタイは、日本円にして3千円だった。それだけで済んで本当に良かった。
店を出て、地下鉄に飛び乗り、ホテルにすぐさま帰った。
生きている喜びをハッカーに伝えたかったが、ハッカーはまだ戻っていないようだった。
そうだ、記念に買わされたネクタイでも付けてみよう。
そう思い、くしゃくしゃのビニール袋から取り出す。
シルクでできているとガチムチは言っていたが、手触りは、昔なつかしい、ザラザラした和紙の折り紙みたいだった。
どこがシルクじゃ!!
まぁまぁ、そのくらいいいじゃないか。素敵なネクタイじゃないか、ハハハ。
僕は今、悟りの境地にいるのだ。
そして、首襟へと通し、ネクタイを結ぶ。
最後にシュッと結び目を、首元へと引っ張って完成だ。
シュッと引っ張った。
すると、中で糸が張っているらしい。
ネクタイのさきっぽが、ピンと上へと反り立った。
・・・ふざけるな。
タイ留学編は、これにておしまいです。
全部実話だから困るね。
てか、ブラック研究室成分少なめでしたね!
でも大丈夫!日本に戻ってからブラック強めの大学院編がスタートします。
では、また!!!
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