前回、研究室の飲み会は盛り上がりに欠けるということで、
1コ上の先輩、島さんと禁断の飲み会改革プロジェクトを策略したのだった。
そのプロジェクトとは、ウィッグで女装し、教授に甘える、というちょっとした余興だ。
ショボいプロジェクトに聞こえるが、人間関係がまるで薄いこのラボにとって、今までそんなことをした人間は絶対にいないだろう・・・。
これはまさに『賭け』といえる、しょうもないプロジェクトなのだ!
準備万端だ!
Amazonからウィッグが2セット届いた。
僕は、清楚な黒髪ストレートのウィッグ。
島さん用には、ブラウンのゆるふわロングだ。
島さん「ひっひっひ!そういう女装してるやつ絶対いるわ!」
僕「島さんこそ!様になってますよ!いっひっひっひ」
言い出しっぺの島さんは最初「ほんとにやるの?まじ?」と躊躇していたが、試着していつの間にかノリノリになっていた。
というか、野郎同士ウィッグ被って笑い合っている光景ってなんなんだろうか・・・。
まぁでもやぶさかではなかった。
準備は万端だ!また留学生が入ってきたので、明日はその歓迎会。
この女装2人組で教授に甘え、忘れられない一撃をお見舞いして、葬式みたいな飲み会の雰囲気をぶっ壊してやる。
斜め上の作戦であるが、これが俺たちのやり方だ!ダークヒーローにでもなってやろうじゃないか。決意は、固まった。
いよいよ歓迎会の始まりだ
場所は、広めの居酒屋。2〜30人が収容でき、掘りごたつの席と毎回相場は決まっていた。
僕「お集まりいただきありがとうございます。今回、留学生3人の歓迎会ということで、親睦を深めていただければと思います!では、教授から乾杯のご挨拶をいただきます。」
いつも通り、司会を淡々とこなし、歓談タイム。
僕「(まだ早いっすよね?)」
島さん「(・・・まだだ。タイミングを図ろう)」
島さんとアイコンタクトを交わしつつ、出どころを伺う。
やばい、怖くなってきた。
こんなの慣れっこだろ? いやでも、このラボでこんなことするやつ居なかったろう!
怒られたらどうする? まぁその時はその時だ・・・。
体張って何になる? いや、わからない。でも、その先を見てみたい気もする・・・。
いろんな考えが頭を巡ってくる。
本番を前に、手が震えてきた。
3〜40分ぐらい経った頃、
大方近くの留学生へのイジりもネタが尽き、
教授の豪快なマシンガントークも収まり、
場が早くもマンネリ化しだした。
島さん「(や、やるぞ!)」
僕「(ひぃ〜。いきますか!)」
いよいよ出番だ。
忘れられない一撃の行方は・・・?
島さん「教授、もしここに可愛い女の子がいたらどうします〜?」
僕「おごっちゃったりするんですか〜?」
前フリは完璧だ!
教授「そりゃそうだろ!おごるおごる!」
島さん・僕「・・・じゃあ」
二人で一斉に、ウィッグを被る。
島さん・僕「教授〜〜!おごって〜〜!!!!」
いった〜〜〜〜!!!
教授「・・・・・・・」
ちびっこ先生「・・・・・・!!!」
学生たち「・・・・・・・」
時が、止まった。
教授「ワッハッハッハッハッハッハ!!!!!」
教授、大爆笑。
学生たちもそれにつられて大爆笑。
ちびっこ先生「・・・プッ〜〜〜〜〜〜〜!!」
教授「まったく、これだから教師ってのはやめられないよな!!いやぁ、最高だ!」
島さん・僕「あ、あ、ありがとう・・・ございます・・・」
時が止まった時、まじで死ぬかと思った。
ものすごいお褒めの言葉をいただけるとは思わなかった。
その後も、スベり知らずだった。
僕(女装中)「あ、では、今回のNEWカマーたちから、一言ご挨拶をいただきます。」
島さん「お前がカマだろ!!」
一同「ワッハッハッハッハ!」
忘れられない一撃は、大成功だったようだ。
で、唯一腑に落ちなかったのは、
後輩にも「ウィッグかぶれかぶれ」と煽ったのだが、断固拒否されてしまった。
こんな温まった状態でやらぬとは、ふざけるな!と拗そうにってしまったが、
きっとこんな風にして、世の中パワハラが生まれるのかなぁなんて思った一夜でした。
そして、後にも先にも、体を張った者は現れなかった。
プラック研究室の闇はやはり深いのかもしれない。
では、また!!!
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